大阪にはクジラの骨で作られた橋がある。

和歌山に太地という、捕鯨の盛んな港町がある。

その昔、太地の漁師たちが、不漁のために飢えていたとき、たまたま太地に行脚していた大阪の瑞光寺の住職が、村人たちに乞われて豊漁祈願をしたところ、クジラが獲れて村の飢饉が治まった。後に村人は瑞光寺に謝礼として、金とクジラの骨を寄贈し、住職はクジラの供養のために、骨を使って橋を造った。

という話を、ちょうど一年前くらいに大学の「クジラと人の関わり」的な授業で聞いて、「そのうちその橋を見に行きたいなー」と思ってたんですよ。しかもちょうど同じころに和歌山の太地に観光にいってて、太地町立くじらの博物館で超エンジョイしまくってたっていうのもあったし。

というわけで、一年越しの念願叶って、瑞光寺の雪鯨橋(通称 鯨橋)を見てきた。

いや、別に「念願叶って」とかいうほど僻地にあるわけじゃなくて、むしろ全然気軽に行ける場所なんやけど。阪急の上新庄駅から徒歩で10分もかからないところなんで、その気になればすぐにでも行けたんやけど。なんか行くタイミングがなくて。

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石碑にしっかり「鯨橋」の文字。

そして、下の写真が瑞光寺の門である。

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左右にそびえるイワシクジラの下顎骨。なんだこれ、かっこええ。

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もうちょいわかりやすく、片側の門、というか下顎骨の写真を。下顎骨を門にしてる、という状況自体がなんか面白いしなんか凄い。

そして、以下が鯨橋こと雪鯨橋の全貌である。

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なんか白い! 確かに「雪鯨橋」という名前がしっくりくる。この色って天然の骨の色なのかな。

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欄干の手すり?的部分が下顎骨。柱?的部分が脊椎骨で構成されている。

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手すり?の下には、肩甲骨が三枚。左右で六枚、つまり三対。三体分のクジラの肩甲骨を利用しているという贅沢な素材利用。下顎骨も、左右で二対ずつと、さきほどの門に一対で三体分のクジラ。一風変わった方向性のゴージャスさだ。

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ふと橋から下に目をおろすと、池にオブジェのように脊椎骨が。橋から落ちちゃったのか、そもそも余った脊椎骨を置いてみたのか。

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欄干のはしっこには、破損した脊椎骨の棘突起のあたり?が無造作に置かれていた。骨組織の繊維質が手に取るようにわかる。っていうか手に取ってるんだけど。クジラの骨格って色んな自然史系博物館に展示されてるけど、ここの橋ほど簡単に触れたり手に取ったりできるクジラの骨ってなかなかないよ。

なお、前述の瑞光寺の住職さんと太地との交流があったのが1700年代半ばの頃で、それから数十年ごとに橋は新たなクジラの骨で造り替えられているらしい。現在の雪鯨橋は、2004年の調査捕鯨で捕獲されたイワシクジラの下顎骨と肩甲骨と、2005年に捕獲されたクロミンククジラの脊椎骨で作られているらしい。ちょうど十年前くらいのものですな。こんだけ雨ざらしの状態で十年経っても、骨って結構綺麗に状態を保ってるんだなーと思った。

そうそう。現在の雪鯨橋は欄干だけがクジラの骨でできているけど、当初は橋全体がクジラの骨でできていたらしいよ。橋板の部分ってどこの骨を使ってたんだろう……。

あと、太地町立くじらの博物館は超楽しいのでオススメ。Pangea Noteにも紹介記事を書いてます。


凄まじい満足度のクジラ専門博物館。太地町立くじらの博物館 | Pangea Note - パンゲア・ノート