我が家にキイロシリアゲアリがやってきた。

f:id:t-abe:20150115152637j:plain

我が家にキイロシリアゲアリの女王が四匹やってきた。琥珀色の体色が非常に綺麗。大きさはクロオオアリのワーカーよりちょっと大きいくらいかな。8mm程度。でも女王なので腹部がとても大きいため、体長よりも大きめな印象はある。

クロオオアリやニコバレシスオオアリと比べると、脚が短いのでよたよた歩いているように見えて可愛い。

キイロシリアゲアリは多雌性のアリなので、ひとつのコロニーに複数の女王がいる。この女王たちはみんな、同じコロニーで育った姉妹かもしれないし、全然血の繋がりのない他人かもしれない。あんまりそこは気にせずに、たまたま出会った他の新女王と共同で生活を始めるらしい。ルームシェアみたいなもんだ。

それぞれの女王から生まれたワーカーたちも、誰から生まれたかは特に気にせず、同じ巣の家族として共同で生活する。

この多雌性は非常に理にかなっている。コロニーを作るアリの生活環の中で、一番リスクが高まるのが、新女王が巣立って自分で新たなコロニーを作り始める時だからだ。

巣立つまでは自分の姉妹であるワーカーたちが世話をしてくれるので食う物には困らないし安全も確保されている。一方、自分で新たなコロニーを作って、ある程度の規模まで大きくなれば、やはり身の回りのことは全て自分の娘であるワーカーがしてくれるので安全だ。

しかし巣立った直後の、これから新たなコロニーを作る、という時はそうはいかない。安全を確保しようにも身を守ってくれるワーカーはもちろんいないし、食料の確保も一匹では難しい。新女王アリにとって、新たなコロニーを作るというのはカツカツの自転車操業だ。巣立つまでの間に自分の身に蓄えた栄養分が尽きる前に、なんとかワーカーを数匹育て上げ、食料や身の安全を確保できるまでにならなければならない。ある程度育った幼虫を成虫にまで育て上げるために、自分で産んだ卵を食べてその栄養分を幼虫に与える、というようなこともする。社員の給料を出すために借金してくる零細企業の社長のようなものだ。辛い。

そんなコロニー創設の初期の多大なリスクを、複数の女王が共同生活をすることで分散しよう、というのがキイロシリアゲアリのような多雌性のアリのとった戦略だ。キイロシリアゲアリとはまた別のアリでは、複数の女王の中で「卵を産む係」「卵や幼虫の世話をする係」「餌を取ってくる係」などを分担するアリもいるらしい。もはや女王アリなのか働きアリなのか何なのか……という感じだ。

ある程度コロニーが大きくなると、ひとつのコロニーに複数の女王がいることのメリットがなくなるのか、一匹の女王を残して他はワーカーに殺されてしまうらしい。シビアな社会だ。まだ先の話だけど、ある程度コロニーが育ったら、女王を分けて飼育した方がいいかな、と思っている。

今まで単雌性のアリばっかり飼っていたので、女王同士がグルーミングしたり口移しで栄養交換をしている様は、見ていて非常に新鮮で面白い。

キイロシリアゲアリは秋に結婚飛行をしたあと越冬し、春から本格的に産卵を始めるそうなので、ワーカーが生まれるのは数か月後かな。